薬剤師よっしーのブログ

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なぜ市販薬の規制緩和は進まない?国が判断した衝撃の理由

先日、PPIという胃酸を抑える薬の市販化が否決されました。

一般の方は聞いたことが無いかもしれませんが、「スイッチ評価会議」という国の会議で決められています。


市販化を見送った理由が「薬剤師はきちんと販売できないからダメ!」という内容だったのですが、

関係のない資料をひっぱりだして、難癖つけているだけなんじゃないの?と、私は感じました。


今後、医薬品の規制緩和が適切に検討されないではないか心配しています。


テレビでは報道されない、日本の医薬品制度の裏側の出来事について紹介します。


※個人の憶測を含む記事です。予めご了承下さい。
※スイッチ評価検討会議の資料はこちら

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販売実態調査の結果について

問題となった調査結果

今回のスイッチ評価会議で問題視されたのが、下記の覆面調査の結果です。

濫用等のおそれのある医薬品を複数個購入する旨を伝えた(2,030 件)ところ、36.6%(742 件)において質問等されずに購入できた。参考:平成28年度医薬品販売制度実態調査

 
ある業界紙によると、対象となった成分はコデインやエフェドリン等を含む咳止めなのだそうですが、この成分は主に薬剤師でなくても販売できる「二類医薬品」に該当しています。


今回議論されている「医療用から一類医薬品への規制緩和」とは関係のない項目です。


調査の実施方法は下記の通りです。

全国(47都道府県)の薬局・店舗販売業許可を取得している調査対象とし、一般消費者である調査員が任意に選択した店舗について、都道府県の人口、店舗の数を考慮して調整後、店舗訪問し、店舗の状況や従事者対応等について調査 した。
調査においては、全数を2つの群に分け、第1群は要指導医薬品を取り扱っていた場合は要指導医薬品を、取り扱っていなかった場合は指定第2類医薬品を調査し、第2群は第1類医薬品を取り扱っていた場合は第1類医薬品を、取り扱っていなかった場合は指定第2類医薬品を調査した。

 
濫用等のおそれある医薬品についてどのように調査したのか、詳細は不明です。

薬剤師はきちんと情報提供している?

むしろ今回の会議で重要視されるべきは下記の項目だと思われます。

第一類医薬品の情報提供の有無

第1類医薬品の調査店舗(1,731 件)のうち、情報提供があったのは 89.4%(1,547 件)であった。

 
89.4%が、薬剤師からの情報提供を受けています。(平成29年の調査では92.4%とさらに改善しています。)

先程の数字とはだいぶ違います。


情報提供が無かった10.6%に関して、調査をしている人が下記のようなルールを理解しているかも気になります。

6 第一項の規定は、第一類医薬品を購入し、又は譲り受ける者から説明を要しない旨の意思の表明があつた場合(第一類医薬品が適正に使用されると認められる場合に限る。)には、適用しない。(引用:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

 
情報提供を拒否するような意思表示をしている場合、覆面調査そのものに問題があるかもしれません。

ソフトブレーン・フィールド株式会社について

今回の調査は「ソフトブレーン・フィールド株式会社」が代行しています。

調べた限りでは、過去4年間連続してこの調査を入札しているようです。


平成29年度は他の企業の入札がなく、1500万円で落札(落札率81.9%)したことを示唆する資料がありました。
参考資料:平成29年度行政事業レビューシート(pdf)

※調査の依頼方法や金額の問題、企業との関連性に関しては知識が無いため言及を控えます。


また、この会社は「クラウドソーシング」という形態のようです。

ホームページでは「1分で登録完了」「自宅の近所で空いた時間にお仕事!」等と登録者を募集しています。


果たして信頼できる調査結果なのでしょうか?


例えば、過去の購入経験により解答できるようなアンケート形式であれば、登録者のモラルによって正しく調査できていない可能性があります。

スイッチ評価会議で言及された以上、厚労省は詳細を公開するべきだと感じます。

これからも市販薬の規制緩和は進まない?

過去には、緊急避妊薬の「ノルレボ」という薬も同じような理由で市販化が否決されています。

H2ブロッカー(ガスター等)が市販化されている中、PPIのスイッチが必要かどうかについては意見が分かれるかと思われます。

しかし、今回の調査結果の一部によって判断されるべきではないでしょう。

これから先も、今回のような意味不明な理由で否決されてしまわないか心配です。


現在、医療費削減は喫緊の課題です。


消費者のために、日本の未来のために、適正な議論や制度の確立が進むことを願います。

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