薬剤師よっしーのブログ

健康食品・サプリや業界の裏話、最新ニュース、バーベキューレシピ、子育て、雑談などなど。

どうなる遠隔服薬指導|国家戦略特区の養父市で「遠くのかかりつけ薬局」も対象に追加

遠隔服薬指導の国家戦略特区である兵庫県養父市の実施体制が整ったそうです。

福岡市、愛知県に続き3つめの自治体となります。

ちょっと気になったのが、「近所に薬局があっても、かかりつけ薬局が遠い場合」も遠隔服薬指導の対象に追加されたことです。

文面を読む限り、敷地内薬局が遠隔服薬指導を担うこともできるようになる気がします。

そもそも現行では「かかりつけ薬局」という言葉も存在していないはずなのですが、今後どうなるのでしょうか。

※厚労省の資料は消える可能性があるので全て引用しました。読み難いですがご了承ください。
※太線は筆者が追記しています。

スポンサーリンク


国家戦略特区の処方箋薬剤遠隔指導事業における対象事例の追加について

平成30年10月5日国家戦略特区WG、厚生労働省の「養父市における遠隔服薬指導の実施地域について」の資料です。

特区法施行規則で定める「利用者の居住する地域における薬剤師の数及び薬局の数が少なく、薬局と(中略)利用者の居住する場所との間の距離が相当程度長い場合」の考え方について、以下の場合も、本事業の対象事例に追加することとしたい。

  • 遠隔服薬指導を求める患者がかかりつけ薬局を有するケースでは、「利用者の居住する場所からかかりつけ薬局までの距離」が相当程度長い場合

※引用:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h30/shouchou/20181005_shiryou_s_1_1.pdf

 

養父市における遠隔服薬指導の事業領域決定に伴う課題

基の資料はおそらくこちらの平成30年9月10日養父市提出資料です。

1 「訪問させることが容易ではない」範囲の取り扱い遠隔服薬指導の実施について、特区法では「利用者の居住する場所を訪問させることが容易 でない場合として厚労省令で定める場合」と定めている。また、厚労省令(施行規則)では「地域における薬剤師の数及び薬局の数が少なく、薬局と利用者の居住する場所との間の距離が相当程度長い場合又は通常の公共交通機関の利用が困難な場合」と定めている。一方、患者には、薬局業務運営ガイドラインにおいて、薬局選択の自由がある。これらを踏まえると、遠隔服薬指導の実施の可否は、患者の選択した薬局と患者の居住する場所の関係において判断されるべきであり、その他の要因が影響を与えるべきではない。
そのうえで、訪問させることが容易でない範囲として以下のとおりとしたい。

  • 本市の地理条件を踏まえ、一律の距離は設けず、徒歩片道 30 分以上。
  • 徒歩片道 30 分以内であっても、天候、道路事情などがある場合は、個別協議とする。

2 「最寄り薬局」の取り扱い厚労省は薬機法の趣旨に鑑み「薬局とは、当然に患者の居住地に最寄りの薬局を差す」とし、 省令の定めも最寄り薬局と患者の居住する場所の関係で判断すべきと主張している。我々は「薬局とは、当然に患者の居住地に最寄りの薬局を差す」と一般的に理解されていないと考えており、特別法(特区法)の考え方が一般法(薬機法)に優先されるという原理からすれば、薬局=最寄り薬局として実施要件を議論することは不適切と考える。更に厚労省が進めている「薬局=最寄り薬局の薬剤師を患者宅に訪問させる」「薬剤師が少ないなら増やせば良い」といった指導は、経済原理を軽視したものであり、体力のない薬局が淘汰されることを懸念する。
 
3 国家戦略特区として地域の社会事情を先見し、課題解決の為に様々な実証を通じ国家の将来設計と経済成長に貢献するというのが国家戦略特区のミッションである。遠隔服薬指導の実現という実証においては、福岡市、愛知県で先行してスタートするも、患者は夫々1 名であり、実証の効果検証に至るレベル迄の道のりが見えない。特別法である特区法の趣旨を活かし、特区の理念である経済成長の為にも幅広に実証を行うべきであり、見えざる規制に屈することなく実証の実例を積み上げて行きたいというのが養父市の考えである。国家戦略特区において遠隔服薬指導の実証が進まないことから、特区外での実現可能性について厚生科学審議会で議論が開始されたとも聞く。特区の意義の見せどころではないか。

引用:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h30/shouchou/20180910_shiryou_s_1_1.pdf

 

門前薬局がかかりつけ

今回想定されているのは「遠隔服薬指導を求める患者のかかりつけ薬局が、近所の薬局では無く遠方の薬局の場合」です。

これは、もう完全にアレなのではないかと…


「厚労省が折れる」形で決着したとの報道がありました。


このルールが全国水準になった場合、自宅の隣に薬局があっても「かかりつけ薬局」が遠ければ遠隔服薬指導の対象患者になります。

実際に「かかりつけていない遠くの門前薬局」が「かかりつけ薬剤師」になっている現状を鑑みると不安を感じます。

やっぱり病院とズブズブな薬局に処方箋が流れる?

当然ですが、遠隔服薬指導を受ける前に病院を受診します。

いざ遠隔服薬指導を受けるとなった時に、患者さんは自由に薬局を選択できるのでしょうか。

現在の門前薬局(敷地内薬局)の状況を鑑みるに、病院の裁量次第でいくらでもコントロールできる気がします。

「遠隔」になっても、結局は病院と「近しい」薬局に処方箋が集まるのかもしれません。

遠隔服薬指導は進む?

現在、国家戦略特区の利用者は少ないようですが、いずれ浸透していく気がしています。

私が入社した頃は一般名処方が発行されることは想像できませんでしたし、後発比率がここまで上がるとはも思っていませんでした。

今後は楽天やアマゾンのような企業が薬局を吸収して遠隔服薬指導を担っていく可能性もあるのかもしれません。


リフィル処方箋


スイッチOTC


かかりつけ薬剤師


敷地内薬局


今後どうなっていくのか私には分かりません。


ただ、患者さんや地域に尽力している薬剤師がちょっとだけ恵まれる環境になったらいいなと願います。